ミジンコ先生の課外授業
- 作者: 花里孝幸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/04/20
- メディア: 新書
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ミジンコ先生の新作
『ミジンコ先生の水環境ゼミ―生態学から環境問題を視る』と内容はほぼ同じ。ジュニア向けということで、文章は柔らかめ。
表紙のカラー写真は、あの坂田明氏。
白樺湖でのバイオマニピュレーション*1の経過の報告があるのがうれしい。
白樺湖は、戦後の周辺住民の生活様式の変化や産業活動の変化と拡大に伴い大量の栄養塩類を含んだ排水が流れ込んでしまい、富栄養化が進み、アオコが発生するようになってしまった。アオコは藍藻類を主とした植物プランクトンの大群集で、この植物プランクトンをミジンコに食べさせて、湖水の浄化をしようというのが、このバイオマニピュレーションの目的で、ミジンコ浄化法とも言える。
白樺湖にはワカサギが放流されており、このワカサギがミジンコを食べ尽くしてしまう。そうなってしまうと植物プランクトンをよく食べるミジンコがいなくなってしまい、アオコの発生を抑制することができない。そこで、ミジンコを食べ尽くさない程度にワカサギを減らすために、魚食魚であるマスを放流して、ワカサギの個体数を抑制しようとするのが、このバイオマニピュレーションの重要なポイント。
つまり、白樺湖の水質汚濁の改善を邪魔しているのがワカサギであるという認識に立っているのだ。
以前、「NHKクローズアップ現代」でも取り上げられたことがあったのだけれど、その番組の内容といえば、全体的にこの実験に否定的な雰囲気だった。、花里先生はガッカリしたのではないかと思う。
この回の放送に出演していた、野鳥の会会長の柳生博さんが、この実験には否定的で、人間は自然に介入すべきではない。みたいな事を言っていたけれど、そもそも、白樺湖は、およそ60年前に農業のために人造湖であ、湖内の魚も後から放流されたもの。そういう意味で白樺湖はまさに人為そのもの。だから、この実験だけを否定する理由はないはずなんだけど。