下水道も下痢をする2

下水道も下痢をするで、下水に油を流すと下水処理場が下痢しますよ。と簡単に説明したんですが、ちょっと端折りすぎまして、肝心なことを説明するのを忘れていました。
同業者からツッコミが入らないうちに、ちょっと捕捉します。

下水処理場の中では、微生物(主に細菌類のコロニー)が汚水を浄化していまして、その細菌類のコロニーを活性汚泥と言います。
その活性汚泥は汚水を浄化するときに、酸素をたくさん消費します。人間が生きていくのに酸素が必要なのと同じ理由です。
汚水に含まれる汚濁成分の正体は、有機物であり、その有機物の主たる構成物質である炭素や水素です。
汚水の浄化とは、分子量の大きな、炭素をたくさんもった有機物が、二酸化炭素や水に分解されることと、水に溶けない違う物質に変換して水の中から取り除かれることの、二つの作用をまとめて言います。活性汚泥は、この浄化の二つの作用を同時に行っています。

油は同体積で比較した場合、他の有機物よりもはるかに多くの炭素と水素をもっています。それを二酸化炭素と水に変換するには、それだけたくさんの酸素が必要になります。
下水処理場では、汚水(と活性汚泥の混合した汚水)の中に、送風機とかブロワーと呼ばれる機械*1で空気を吹き込んで酸素を供給しています。そして活性汚泥は水に溶け込んだ酸素を利用します。
そこに分解されるのにたくさんの酸素を必要とする油がたくさん入ってきますと、油がたくさんの酸素を消費してしまい、機械の酸素を供給する能力を超えてしまいます。そうなると、活性汚泥が酸素不足の状態になってしまいます。活性汚泥は酸素不足の状態では、汚水を十分に浄化することができなくなってしまうために、最終沈殿地で分離される上澄み水が、汚濁成分をたくさん含んだ濁った水になってしまうのです。
この状態も下水処理場が、下痢をした状態と言えます。

下水処理場に油がたくさん流れ込んでしまうと、最終沈殿地で活性汚泥が沈殿・分離できずに活性汚泥が流出してしまったり、活性汚泥が沈殿・分離できても、上澄み水が汚濁成分をたくさん含んだ濁った水になってしまいます。つまり、下水処理場がお腹を壊して下利便を垂れ流しになってしまうんです。

そういうわけですので、下水道に油を流すのはやめましょう!

*1:金魚を飼育するときに使うエアポンプみたいなもの