土は魔法使いじゃないよ

煩悩是道場 - そろそろ下水道に油を流すことについて考えてみようのブクマのコメントに気になったのがあったので、ちょっとコメントしてみます。

k_wizard 油を流しても大丈夫なようなシステムを考えてみるか…

それは厨房排水処理装置としてすでにあります*1。ただ、現在の下水道を厨房排水処理装置化するのは、技術的には十分可能でも、コストがバカ高くなります。下水道使用料金が今の2倍3倍になっても良いのなら、そういうシステムも可能です。

usai 環境 生ゴミを砕いてそのまま流す「ディスポーザー」も、場合によってはダメなのかな? 処理槽つきなら大丈夫なの? 教えて偉い人!

ディスポーザについては、処理槽付きなら大丈夫ですが、処理槽なしはダメです。
詳しくは、東京都下水道局のウェブサイトにあります<Q&A><ディスポーザー>をご覧下さい。

partygirl 米のとぎ汁もダメだよ。あと味噌汁とか、ラーメンのスープとかもなるべく流さない。とにかく栄養のあるものは汚染物質。庭があれば土にまいたほうが

ちょっと水環境に関心のある人には、こういう誤解をしている人が多いんですが、米のとぎ汁も味噌汁の飲み残しもラーメンスープの飲み残しも下水道に流して大丈夫です。普通に生活して普通に出る汚水についてはまったく問題ありません。だって、下水処理場は普通の生活の中で排出される栄養のある汚染物質を浄化するための施設ですから。
下水処理場という施設は、逆にある程度、つねに汚染物質を流し続けなければ浄化の能力を発揮できないっていう、ちょっと困った施設なんです。
天ぷら油をそのまま流しに流したり、消毒液や洗剤を一度にたくさん流したりしなければ、それほど神経質になる必要はありません。

下水処理場にとって、一番困るのがシアンなど微生物を殺してしまう化学物質で消毒液や漂白剤なども良くありません。次に油のような濃度の濃い汚濁物質なのですが、その次に困るのが、意外にも“きれいな水"をたくさん流されることなんです。
具体的に言うと、朝シャンとかお風呂の水とか洗濯のすすぎ水とか、あと、水道の出しっ放しが一番良くありません。
この辺は、なかなか納得しにくいと思うんですが下水処理場ってそういう施設なんです。

で、下水処理場にとって好ましい対応は何かというと、油などを流さないことと、あと、節水です。とくに昼間(午前9:00〜午後14:00くらいの間)の水道の使用量が多い時間帯で、できるだけ節水することです。


あと、庭の土にまくのは、じつは、ゴミをポイ捨てしているのと同じなんですよ。土にまけば形がなくなるから、なんとなく浄化されたような気がするんですけど、実際には、汚染されているんですよ。
具体的に言うと、畑作地での過剰施肥による地下水の亜硝酸態窒素濃度の上昇がそうです。それが庭でも起こってしまうのです。庭で野菜などを栽培して、米のとぎ汁を肥料として使うのなら良いのですが、食料を作らない庭に米のとぎ汁をまき続けますと“リン”などの蓄積も問題になります。

そういうわけで、「油でも何でも下水道に流せばOK」という考え方を捨てていただくと同時に、「米のとぎ汁でもなんでも庭の土にまけばOK」という考え方も捨てていただきたいと思った次第です。

*1:といっても、油をそのまま活性汚泥で処理するのはやはり難しいので、一度、油を分離し、分離した油を別に処理します