ペンギンの翼

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)

すごく面白かった。
ペンギンやアザラシやウミガメと言った海の生き物の生態調査と、生態調査で威力を発揮するバイオロギングの話。

陸上の獣や鳥や虫と違って、海の中や土中の生き物の暮らしぶりを観察するのは非常に難しい。熊の調査などで効果の大きいラジオテレメトリーや定点カメラは水中では使えない(その分、どうしても研究の進展が遅くなってしまう。そのあたりの事情が捕鯨問題にも影響している)。

そこで、いろんなセンサーやデジタルカメラとそのデータを蓄積するメモリーを、イルカとかウミガメの体に直接付ければ良くね? という発想が生まれる。
そのシステムをバイオロギングと言うらしい。工場やプラントや上下水道などでシステム・工程を管理するデータロガーのミニチュア版だね。

そのバイオロギングでの調査の結果、本来変温動物のはずのウミガメが実は体温を調節しているとか、ペンギンが潜水するときは体温を大きく変化させていることや潜水深度がこれまで考えられていた以上に深いことなどが解明されてきて、海の中の世界は、地上の常識が通用しない世界らしいことが分かってきた。
アザラシのバイオロギング調査も非常に面白い。母アザラシが子アザラシと一緒に泳ぐ様子が明らかになり、氷の下の世界が教科書とは全く違っていたこともわかった。

今後も、センサーやバッテリーが小型かつ高性能になり、メモリーも大容量化するはずだから、より密度の濃い調査が可能になって、いろんなことが解ってくるはず。今後も楽しみ。

あと、地上の獣を調査している学者さん達から、バイオロギングに対して「そんなことしてなんの意味があるんだ?」みたいな、いちゃもんを言われたらしいが、そういうことをいう学者って、ほんとに学者なのか? こういうこと言う馬鹿学者は、惑星探査も無駄だって言いそうだな。とりあえず、小学校から理科を勉強し直してこいや。


それで、ペンギンは水中では、浮力に逆らう下向きの揚力を発生させているという記述があって、目から鱗。そりゃそうだ。地上とは水面を境に天地が逆になってるんだよね。

で、ふと疑問に思った。
ペンギンの翼はフリッパーと言うらしいのだけれど、フリッパーの断面の形状が気になった。下向きの揚力を発生させているとすると、下向きに、鳥のような凸に湾曲しているのだろうか?と

で、上野動物園で実物を見てきた。

ちょっと遠くて良くわからないけど、上面も下面も平らな板状に見える。陸上の鳥のように湾曲していない。空気より遙かに粘度の高い水中では、鳥の羽のような形状よりもこのような形状が良いのかもしれない。