お腹に優しい乳酸菌も川に捨てればゴミです

kikulogさんのkikulog EM菌投入は河川の汚濁源で触れられている福島民友 県が初の見解「EM菌投入は河川の汚濁源」の続報です。


4月1日に福島テレビ FTVスーパーニュースで放送された『情熱リポート「EM菌で大激論」』から、抜粋して要約しておきます。TV局が編集したものを、さらに抜粋・編集したものですから、関係者の主張の意図を正確に伝えていないかもしれませんので、そのへんよろしくです。

先月、福島県はEM菌には河川の水質浄化の効果はないと発表しました。
福島民友 県が初の見解「EM菌投入は河川の汚濁源」
この福島県の見解に、
「官の名で水をかけ、否定し妨害する」形になっています
とEM菌を推進するNPO団体が抗議文を発表。
この抗議に対し、福島県の担当者はこのように回答。
県の分析結果なんかもきっちり出ていますので、それらはお示してですね そうすると高濃度の微生物資材を投げる(川に投入すると言う意味)ことは どうなるかということは、やっぱり自らのですね中で考えていただければと思います
EM菌を推進する「EM・エコ郡山」の理事長・武藤信義さんが、
福島県はEM菌は川を汚すと言うけど・・・
と言いながら活動に参加している人たちの前でEM菌を飲んで見せる。

その後、沖縄県うるま市にあるEM研究機構とEM研究機構の支援を受けて作られた、至る所にEM菌をつかったEMホテルを紹介。
そしてEM菌の開発者の比嘉照夫氏のコメント
福島県の指摘に対して
福島県でも、あちこち良い成果がでてるわけですから それを無視してあえて否定的な意見を出すという背景が我々には理解できないですね。EMのボランティアをですね、行政が拒否するということは行政の自殺行為です


その後、EMを積極的に推進する沖縄県うるま市を紹介。
うるま市では「EMによるまちづくり」を推進していて、トイレにEM菌を散布するなど、積極的にEM菌を利用している。

FTVの調査では、全国でEM菌に否定的な見解を出しているのは、福島県の他に、福井県、愛知県、岡山県広島県、そして「うるま市」のある沖縄県

福島県の見解の根拠は、『菌を7日間培養して実験した結果逆効果の数字が出たため』というもの。
この実験を分析した、福島大学の難波謙二准教授のコメント
EM菌による分解のメカニズムの根拠ですか 科学的に通用する根拠というのは今のところ見いだせないです (川に)投入しても それ自体が科学的因果関係として意味を持つということはないと思います

つづいて環境省のコメント
EM菌は川に有効という分析結果は把握しておらず散布は自治体に任せている


そして、
『EM菌について議論は始まったばかり』という締めくくりのナレーション

アナウンサーが、NPO団体の抗議文にたいして、福島県は先月28日に「考えは変わらない」と回答したことを捕捉。


「EM・エコ郡山」の理事長・武藤信義さんがEM菌の活動をする人たちの前でEM菌を飲んでみせたが、それと、EM菌の効果とはまったく関係ない。
なぜなら、川を汚している汚濁物質のほとんどは一般家庭の生活排水で、そのほとんどを占める有機性の汚濁物質は、もともとは人間が食べたり飲んだりしているもので、それ自体はまったく安全な物なのですから。
でも、そんな安全なものでも、川にたくさん流せば、川を汚染するんです。魚などの生き物を殺してしまうんです。

健康によいといわれる乳酸菌などの微生物も同じです。微生物も砂糖と同じ有機物で、しかも、窒素やリンの栄養塩類も含んでいますから、水環境にとっては、汚染物質そのものです。一度に大量に流せばゴミを川に捨てているのと同じなんです。
だから、微生物によって汚水を浄化する下水処理上や浄化槽も、汚水を浄化している微生物が一度に大量の流出すれば、汚染物質の流出と同様のものとして扱われ、法律によって厳しく規制されているのです。


EM菌は汚水を浄化すると言われていますが、実は、全ての菌が汚水を浄化する能力を持っています。だから、あたかもEM菌だけが特別な浄化能力を持っていると考えるのは誤りです。
微生物が自らの生命を維持し、増殖するために有機物から栄養とエネルギーを得ます。この過程で、有機物が分解され、最終的には二酸化炭素や水に、あるいは、メタンなどに分解されます。つまり、細菌類の生命現象のある条件を、人間が便宜的に「浄化」と言っていだけなのです。
二酸化炭素や水に分解される時には、酸素が使われます。排水処理業界では好気性分解とか言います。好気性分解が進行しますと、川や池の水に溶けている酸素がなくなってしまい、魚などは生きられなくなります。
またメタンに分解される時には、酸素は使われません。この過程を嫌気性分解とかメタン発酵などと言いますが、このメタン発酵の時には、微生物の種類によって、様々物質が生み出され、なかにはあの「ドブの臭い」のような強烈に不快な臭いのする物質を生み出す微生物もいます。
ですから、あの不愉快な臭いは、実は、水が浄化されている途中の臭いであって、排水の浄化が進んでいる証拠でもあるのです。
酸素を使う、好気的分解では、酸素を使わないメタン発酵よりも浄化の速度が速いですが、そのかわり水中の酸素をたくさん消費します。その結果、水中の酸素がなくなり、酸素を使わない嫌気的分解・メタン発酵が起こって、悪臭物質が生み出され周囲が不快な臭いになるのです。

しかし、EM菌は、その両方が起こらないというのです。
微生物による排水の浄化も、質量保存の法則に従うのです。EM菌を使ったからといって、汚濁物質がどこかに消えるわけではないのです。
通常の好気的分解よりも遙かに高速ということは、酸素の消費速度が速いと言うことであり、水中の酸素がなくなって嫌気的分解が進んで、悪臭物質が周囲に放出されるはずですが、しかし、臭いが消えて、さらには、酸素がない環境では生きていけないはずの魚も戻ってくる。こんな、質量保存の法則を無視した現象が起きるはずはありません。
何か、トリックがあるはずです。

仮に、EM菌の投入によって臭いが消えた、あるいは水が綺麗になったからといって、川の水が浄化されたと考えるのは、短絡的です。臭いが消えるのは、浄化作用が弱くなった可能性もあるし、綺麗になったように見えても、汚濁成分が川の底に沈んでいるだけかもしれないのです。
無色で臭いもしない、透明な砂糖水も、川に流せば汚濁物質なのですから。



比嘉照夫さんのコメントも問題があります。
『EMのボランティアをですね、行政が拒否するということは行政の自殺行為です』と言うのですが、善意のボランティアが無条件で認められるべきというのは、非常に危険な考え方だと思います。
善意のボランティアの行為が、社会的な害悪をまき散らすことは良くあることであって、だから、もしある善意のボランティアの行為が社会や環境に悪い結果をもたらす恐れがある場合には、行政がその行為に否定的な態度を取るのは妥当だと思います。