戦後の自殺

終戦からしばらくの間(20年〜30年)は、現代と比較して、全世代を通じて自殺死亡率が高い。とくに青少年世代と高齢者の自殺が非常に多い。
現代の若者と高齢者の自殺死亡率は、過去最低の水準にあるが、一方では、40代〜50代の中年世代の自殺死亡率は戦後最高水準にある。

自殺という視点から見れば、現代は、若者と高齢者にとって悪い世の中ではない。

第二章 青少年の自殺の実態

中学生、高校生につづき、大学生についても稲村さんは述べています。大学生になぜ自殺が多いかについては、古くから多くの考察があるようです。大学の持つ精神的圧力をあげる人もいれば、勉学、孤独、失恋、家族関係、就職また薬物の役割などを強調する人もいます。

大学生は自殺頻発群というイメージがあるらしいが、実際は違うらしい。
現代青少年の社会学―対話形式で考える37章 (SEKAISHISO SEMINAR)』で、渡部真氏は、「大学生の自殺者は、同世代の就職組と比較して低い」と指摘し、昭和20年・30年代に突出して多い若者の自殺が、昭和40年代以降、急速に減少するのは、高学歴化(あるいはモラトリアム化)の影響が大きいと分析する。

調査者にとっては、自身が大学生の経験者であり、また職場が大学ということもあって大学生は身近な存在であるが、有職青少年はそれと比較して遠い存在である。そのへんのバイアスには注意が必要だと思う。

大学生が、様々な精神的圧力、勉学、孤独、失恋、家族関係、就職で悩んでいるように、有職青少年も大学生と同じように悩んでいるし、大学生が有職青年よりも、より困難な問題を抱えているということはない。むしろ、大学生の方が困難の度合いは小さいだろう。

労働環境を考えれば、有職青少年には、大学生以上のフォローが必要なのだが、残念なことに今も昔も放置されているのに近い状態だ。