下水道も下痢をする

下水道といった場合、市中に埋設された下水管路網と、下水管路網によって集められた汚水を浄化する終末処理場(下水処理場のこと)を含む、下水道システム全体のことを言います。

id:ululunさんのそろそろ下水道に油を流すことについて考えてみようは、主に下水管についてのお話しでした。


まなえさんより

たしか油を流してはいけない理由がもう一つあって、
「たくさんの油が下水処理場に流れると腹を壊すから」
だったと思ったのですが本当ですか?

との、コメントを頂いたので、下水管の先の下水処理場に対しての油の影響を、ごく大雑把にですが解説してみます。

で、結論を先に言いますと、下水処理場もお腹を壊します。お腹壊して下利便垂れ流しになっちゃいます。
下水処理場は建造物で、動物でもないのに、下痢するってのもの変な話ですけどね。


下水処理場のしくみについてはノロウィルスと下水処理でごく大雑把にですが説明していますので、そちらも読んでいただくとして、では、下水処理場がお腹を壊した状態とはどういう状態かをごく大雑把に説明してみます。

この上の図の最終沈殿池(さいしゅうちんでんち)では、エアレーションタンクから流れてきた汚水を静かに流すことによって、活性汚泥(かっせいおでい)を下の方に沈ませ、浄化された上澄み水だけを河川や海に放流します。

活性汚泥とは、主に細菌類によって形成され、茶色っぽい牡丹雪のようなものです。この活性汚泥が、下水に含まれる汚濁成分を取り込んで、汚水を浄化します。この時、細菌類によって分解される汚濁成分は、約半分位で、あと約半分は細菌の増殖に使われるのです。つまり、活性汚泥がどんどん増えるんです。

活性汚泥は、比重が水に近いため、米粒のようにはすぐには沈ます、ゆっくりとしか沈んでくれません。
油のような、大変濃度の濃い汚濁成分が下水処理場に流れ込んでくると、活性汚泥がどんどん増えます。増えた上に、活性汚泥の比重が軽くなり、最終沈殿池で沈殿・分離ができにくくなって、沈殿池から活性汚泥が溢れて流出してしまうのです。
活性汚泥は、汚濁成分そのものですから、汚水を垂れ流しにしているのと似たような状態になってしまいます。

言葉だけで説明しても、なかなか理解できないと思いますので、活性汚泥の写真をのせます。
牡丹雪のようにフワフワしているのが細菌類のコロニーで活性汚泥(かっせいおでい)と呼ばれるものです。コロニーを形成する細菌は、自然由来の種々雑多な細菌で、特定の細菌を培養しているわけではありません。
その活性汚泥が沈殿・分離される様子で、完全に混合されている状態から静置して30分間の様子です(写真は5分間隔です)。



最終沈殿地は、このように活性汚泥を沈殿・分離させ、浄化された上澄み水と活性汚泥とを分離するためにあります。

下水処理場がお腹を壊したり下痢になった状態とは、活性汚泥が沈殿・分離できなくなってしまった状態を言います。活性汚泥が沈殿・分離できなくなってしまうと、汚濁成分そのものである活性汚泥が河川や海に流れ出てしまったり、さらに水を綺麗にに浄化するための高度処理施設などに悪影響を与えます。

というわけで、ガッテンしていただけましたでしょうか。