リンは有限な資源

なんか最近、真面目な環境系ブログ化してるなぁ。

土は魔法使いじゃないよ

庭で野菜などを栽培して、米のとぎ汁を肥料として使うのなら良いのですが、食料を作らない庭に米のとぎ汁をまき続けますと“リン”などの蓄積も問題になります。

という私の説明に対して

こまいぬ 『芝程度じゃダメってことですね。
リンをたくさん使ってくれるのは、いわゆる野菜みたいな植物が主なのでしょうか。

という、コメントをいただいたので、ここで補足説明します(長くなるので)。


芝でも野菜でも、同じ重量なら必要とするリンの量はそれほど変わらないと思います。同じ植物ですから。
では、芝と野菜とでは何が違うのか?

大きな違いは、植物体に取り込まれたリンや窒素などの物質が、成長した後にどこに移動するか?です。

野菜であれば、人が食べて、その野菜の取れた畑とは違う場所にウンコします。
そうすることで、野菜に取り込まれたリンや窒素などの物質は、庭や畑から違う場所に「移動」します。
そして、畑から移動して減った分を肥料で補います。

では、芝ではどうでしょう?
普通、庭の芝は、食べたりしませんよね。ですから、どこにも「移動」しません。
「移動」しないのですから補う必要はないとういことです。
実際には、刈り込みをして、常に成長を続けるように管理するわけですから、施肥が必要ですが、新たに芝の面積を増やすよりは少ない肥料で済みます。刈り込んだ芝を堆肥化して、また、芝の肥料に使うのなら、肥料はさらに少なくて済みます。
もし、芝を「生産」して出荷するのであれば、野菜のようにたくさんの肥料が必要になるでしょう。



あと、『“リン”などの蓄積も問題になります』と書いたのですが、人間に健康被害が出るとか、環境破壊が起きるという意味ではありません。

リンは、有限な資源(現時点では)です。その有限な資源が、食料の生産現場に返されることなく、食料の生産にまったく寄与しない庭にまかれても、無駄なのです。貴重な資源であるリンが食料生産に再利用されることなく「死蔵」されることが問題なのです。
そういう視点で考えるなら、下水道に流して下水汚泥から肥料として再利用される方がエコと言えます*1

ちなみに、リンの循環・リンの再資源化という視点から、ディスポーザーを積極的に評価する意見もあります。


ついでに、最近、食料の移動(輸出入)に伴う水の見かけ上の移動を、仮想水とかバーチャルウォーターとか言って、なにか重要な問題であるかのように言う人がいますが、「リン」の移動に比べれば、重要度はかなり下がります。

*1:下水汚泥の全体量に占める割合は少ないが、実際に肥料として再利用されている。