EM菌浄化法はミジンコ浄化法だった

EM菌で検索して、ここにやってくるお客さんが多いので、なんとなく気になって、EM菌でググったらこんなの見つけた。
白井第一小学校
EM菌を活用した環境にやさしいプール清掃

学校で、プールの清掃にEM菌を使うっていう話は時々聞くことがあって、ほんとうに効果があるのか疑問だったけれど、このレポート見てなんとなく、見えてきた気がする。

経過が私のミジンコ浄化法の実験と似ているんです。これ→越えられない壁:質量保存の法則
このプールの浄化に限って言えば、ミジンコ浄化法の変種だと思います。


まず、EM菌を培養するところに注目していただきたい。
EM菌の培養には、米のとぎ汁を使うのだけれど、米のとぎ汁は、川に直接流しちゃいけないって言われるくらい、リンや窒素の肥料成分を多く含んでいるものです。つまり、EM菌は汚濁成分そのものなんです。

次に、EM菌を投入する前と投入した後のプールの水の変化に注目。
EM菌を投入した後の方が植物プランクトンが増殖して、プールの水が青汁化してます。
そもそもプールの水は、水道水(または水質の良い地下水)を使いますし、使用中は浄化装置と消毒設備で汚濁成分のない清潔な水質を保ちます(衛生上は「掛け流し」が理想ですが、運営コストが嵩みます)。
プールの使用中止後は水の入れ替えと浄化設備を停止します。もともと水道水ですから、本来ならプールの水は綺麗なままのはずですが、生徒たちの体の垢やオシッコや、土埃や落ち葉や水鳥の糞などで水が徐々に汚れます。プールの水は汚れてはいますが、それほどひどい汚濁ではなく、植物プランクトンが増殖するほどの栄養分もありません。植物プランクトンが増殖しないために、ミジンコなどの動物プランクトンや、動物プランクトンを餌とするヤゴなどの水生生物も増えません。

このプールの水に、リンや窒素の肥料分を多量に含んだEM菌の培養液を投入すると、その肥料分を元に植物プランクトンが増殖します。EM菌の投入によって富栄養化現象が起こるのです。
植物プランクトンが増殖すると、それを餌とする動物プランクトンが増殖します。また、動物プランクトンを餌とするより上位の水生生物も増えます。
つまり、プールの中にミクロの生態系ができあがるのです。これは、里山の水バージョン、里水なのです。

動物プランクトンを餌とする魚がいない場合、ミジンコなどの動物プランクトンが植物プランクトンを食べるので、プールの水の透明度は高くなります。
富栄養化によって複雑な生態系ができた場合には、プールの壁面にこびりついて増殖する藻の種類も変化して、壁面に固着する力の弱い種類に変わると思われます。
ミジンコが増殖して水の透明度が高くなっている段階でプール清掃をすれば、あたかも、EM菌によってプールが綺麗になったように、錯覚してしまうのではないかと思います。


つまり、プールの限って言えば、EM菌を投入しなくても、同量の米のとぎ汁や肥料を適量入れれば、同様の効果が得られる可能性が高いのです。


しかし、なんともったいないことでしょう。
もともと綺麗だったはずのプールの水が、どうして数ヶ月もすると水が汚れてプランクトンや藻が発生するのか?そのプールの水の変化を観察することによって、水環境の基本を理解できるんです。
その絶好の環境教育の素材を、EM菌のためにみすみす無駄にしてしまう・・・なんとももったいない話です。